犬神のいちばん長い日――
 岩泉〜真崎〜浄土ヶ浜〜舟っこ流し 見物記    2008年8月16日 

 去年、兄者のはからいにより、あろうことか広島へ行くことができました。それはもういくつもの国 を越えたような大旅行でありました。

 それからポンと1年が経ち、今度は広島にてお世話になった方が、我が寒村にお越しになりました。


 なればその時の恩返しを、とは思ったものの、あいにくと年中無休の職場ゆえ、一緒に一日行動でき たのは最終日、すなわち8月16日の土曜日のみでした。

 とはいえその日は朝から晩まで、あちこちを全力で回り、遊びました。

 いつかこのタイトルを使いたいと思っていましたが、そう言うにふさわしいくらいステキな、全力で 駆け抜けた一日であったと思います。


 1.早朝洞窟探検

 朝6時に行動開始。そりゃ犬神は5時だろうと4時だろうと、それなりに対応できますが、まさか遠 方からはるばるやってきて朝6時から動き出すとは思いもよらなかったのではないでしょうか。とはい えとにかく広く、見所が離れた場所にあるので、それもやむをえないというもの。そんなわけで勢い走 り出しました。

 ちょっと前に開通した早坂トンネルをあえて通らず、すっかり人気のなくなった早坂高原レストハウ スでちょっと休憩後、岩泉町は龍泉洞へ。

 自分で車を運転するようになってからは何度か来ているこの場所ですが、安家洞、幽玄洞と比べると 割合歩きやすいような気がします。やっぱり良くも悪くも、きちんと観光洞として整備されてるからか な。もちろん洞窟なので狭いし暗いし、深〜くて綺麗な地底湖があるので、そういう意味では怖いとこ ろです。一応、うきわとかゴムボートがあるので、落ちてもたぶん助かると思います。って落ちてもな んて言っちゃいけませんわな。落ちません。大丈夫です。

 近くには龍泉「新」洞というのもあります。こちらは昭和に入ってから発見された場所で、化石など が発掘された場所だといいます。ただドサクサに紛れてラスコー洞窟の壁画などがあとからペイントさ れていて、どちらかというと「洞窟を使った科学館」といった位置づけが正しいのかな。実際、名前も そうなっていますし。

 こちらを目当てに行く人はあんまりいないと思いますが、もしも化石が見たいのならやはり県南の幽 玄洞をお勧めします。こちらはちょっと狭くて急な部分もあり、大変は大変なのですが。

 
 で、一通り洞窟を見終えて、時間はまだ9時台。どうするか。海にでも行くか。ということで、ここ から程近い真崎海岸を目指して走ることとなったのでした。


 2.伝説の島を見たくて


 岩泉から海のほうへ行き、途中で右折して南下すると、海岸沿いの道路を走ります。国道の番号で言 うと、455号線から小本方面へ行き、さらに45号線に入って宮古方面に行きます。

 すると途中に旧田老町があり、そのエリアに真崎海岸はあります。

 今回、旅の途中で非常に懐かしい場所を通りかかりました。

 かつて国民宿舎「山王閣」として栄華を誇っていたころは、何度か年末年始にぶつけて泊まりに来て 、初日の出を誰よりも早く見る、なんていうことをやっていたのですね。

 ここもまたいつの間にか閉鎖し、他の廃業したホテル同様、巨大な墓標のようになってしまっており ました。「荒城の月」ではありませんが、昔の光いまいづこ、といった感じです。

 まあ、そんな個人的な感傷はさておき、今回真崎海岸に来たのは泳ぐため、というのともうひとつ「 がっかり島」なるものを見てみたい、というリクエストがあったためでした。

 「がっかり島」。なんじゃそら。在岩手歴27年の犬神も知らなかったのですが、検索するといきなり wikipediaにも載ってる、なんかちょっとした有名スポットみたいですね。島というか岩というか、まあ そんなものがあるのなら、ひとつ見てみたいね、ということで来ては見たのですが……。

 それほど有名な割には、案内板に書いていないのですね(その代わり「鳥糞島」なんていう、口に出 すのもはばかられるような場所はあったのですが)。

 「そういう島があると思って来てみたら、全然見つからなくて、それでがっかり島って言うんじゃな いの」などとたわけたことを言う輩もいましたが(私ですが)、その後地元の漁師に聞き込みをしても 「聞いたことがない」という返答。第二目的として「泳ぐ」というものがありましたが、気温・天候と も思わしくないので、浄土ヶ浜で遊覧船に乗ろう、ということになり、結局さっさと出てしまいました 。まさに、がっかり。

 3.ウミネコミュニケーション

 「泳ぐ」ということが、実質的に無理があるということで、ここでは遊覧船「陸中丸」に乗ることに なりました。

 以前8:30の始発船に飛び乗り、いったん山田まで行きその船でまた折り返して戻ってくるという 奇行を成したことはすでに記したとおりですが、もちろん今回は時間もないし、そもそも1日に1本し かその船は出ていないので、ぐるりと1周して戻る島巡りコースで出航。セーラー(水兵)服のお姉さ んにキップを手渡して乗船。

 さすがになかなかの乗船率ではありましたが、人がどれほど乗ろうがやることは変わりありません。 お姉さんの名勝ガイドそっちのけで、みなウミネコパンやらかっぱえびせんやらを空中にかざし、ヒッ チコックの映画の如く飛来するウミネコに餌付けをする。これに尽きます。

 船の左右から腕を突き出し、並行に空を飛ぶウミネコに食べさせる、あるいは目前にトスするように 放り投げると上手に食べさせることができるのですが、今回はあえて椅子に座ったまま真上にパンをか ざしたので、指までかじられたり手を離すのが早すぎて上手に食べさせられなかったり、なかなか苦戦 してしまいました。

 しかも一羽は餌にありついた瞬間失速し、1階へと下る階段へアフターバーナーの墜落よろしくズド ドドーンと堕ちてしまいました。たぶん隙間から飛んで行ったとは思うのですが、もしかするとくちば しに引っ掛けてしまったのかもしれません。ゴメン。

 
 そのあとは名物の雲丹麺(うんたんめん。「うにめん」ではありません)やら宮古バーガーやら浜ラ ーメンやらを食し、しばし海岸で休息。その後レストハウスでオミヤゲを買い求め、いったん家路へと 着いたのでした。

 帰りの車中ではさすがの犬神も眠気がひどく、極力寝ないようにとは思ったものの、数瞬、意識を失 っていたようでした。

 こうして犬神たちの長い一日が終わった……わけではありません。夜は夜で、花火大会があるのです。 ひとまず家に帰り、ちょっと着替える、というお客様をお待ちすること少々……。

 降りてくると、大変に綺麗な、風流な浴衣をお召しになっていました。私などは餓狼伝ばりに履き古したジーンズと Tシャツ、それにシャツといったほとんど変わり映えのない格好なので、実に対照的でした。いや、私の格好はどうでもいい。

 で、ここに来ていよいよ(乗車定員の関係で)私のワゴンRが始動。混雑と駐車場所に少しく困りながらも何とか車をとめ、会場入り。

 今年の夏のフィナーレとでも言うべき、盛大でファンタスティックな時間を迎えるのでした。




後編 「ファイナル・サマー編」

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