犬神のいちばん長い日――
 岩泉〜真崎〜浄土ヶ浜〜舟っこ流し 見物記    2008年8月16日 



 我が県には「舟っこ流し」という行事があります。

 いつごろから始まったのかは諸説紛々なのですが、まあ江戸時代からあったっぽいのは間違いありま せん。ものすごく簡潔に言うと、飾り付けた舟を北上川に浮かべ、これを盛大に燃やしてしまえ、とい う非常にロックな行事です。ってジミ・ヘンドリックスかよ。

 広島からやってきたお客様は「もったいない」と言っていました。う〜ん、確かにその通りです。犬 神も小学生の頃はそう思っていたので、あんまり好きではありませんでした。

 ただ考えてみれば、これは「送り火」のド派手なやつ、なんですよね。だから盛大に燃やして、お盆 期間中里帰りした先祖の霊を、もう一度送り返してあげるために。どうせ送るなら景気よく送り出して やろう、と本当にそんな思想なのかどうかはわかりませんが、とにかくそんな感じで見れば、むしろ派 手に燃える方がいいのかもしれません。

 しかしながら最近は派手さがどんどんエスカレートしているのか、爆竹がパンパン鳴るわ、連発花火がドカド カ上がるわ、日本の送り火と言うか中国の正月みたいになっていてびっくりしてしまいました。こんな んだったかなあ? って。まあ、祭りは派手でにぎやかな方がいいですし、もしも自分が送られる側に 立った時も、盛大に送ってもらった方が気分がいいとは思いますが。


 例年であればこのあと、地元の小学生たちによるファイヤー玉入れ……ではなく「投げ松明」がある のですが、今年はそれもなく、いきなり花火大会へ移行。川原で巨大な火の玉を数メートル上のターゲ ットめがけてボンボン投げつける、これまたきわめてロック的な行事であり、楽しみにしていたのです が……。残念無念。


 ともあれ、19時から予定通り花火大会開始。今年は打ち上げ場所から割と近い場所で弟者、兄者と お客様とで観覧。

 近いこともあったでしょうし、そもそも花火がでかいこともあったでしょう。首をほぼ真上に近い角 度に持ち上げ、その状態で40分ほどたくさんの花火を見ました。普通に真円を描くものがあり、桜の 花びらの如く5方向に散るものあり、クラスター爆弾の如く(たとえが悪いですが)小さい花火がボツ ボツと空中で炸裂したり。規模、技巧とも大変に凝っていて、すばらしい花火が打ち上がった時などは みんなで拍手してしまいました。

 そういった大きな花火を惜しげもなくラッシュで打ち上げることも何度かありました。単発でも十二 分に綺麗な花火をボンボンボンボン十数発、矢継ぎ早に打ち上げると空は一瞬、昼間のように明るくな り、こちらに落ちてくるんじゃないかと思ってしまうくらい空中に花が咲き乱れました。無論、盛大な 拍手が沸き起こったのは言うまでもありません。

 そんな感じで盛岡の「夏」のフィナーレとなる花火大会を、今年はフルで楽しむことができました。 あいにくとカメラを忘れてきてしまったので、写真等は一切ありませんが、そんな無粋なものはよろし い(え?)。とにかく今年は、わざわざ広島からお越しくださったお客様と一緒に花火を見上げられた こと。それだけで生涯最高なのですから。

 
 地元の祭りですし、ここまで気合を入れて書くこともないかと思いましたが、今年はちょっとスペシ ャルな感じだったので、あえて書きました。

 岩手の人間が広島を知り、広島の方が岩手を知る。とても楽しいことです。

 今度はいつになるかわかりませんが、また広島に行ってしたいと思います。その際はよろしくお願い します。

 そして、今回は一日しかお付き合いできませんでしたし、あんまりお話することもできませんでした。なので、またの機会がありましたらば、ぜひ――



 おでってくなんせ。




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