PROJECT NEKOTORA



海へ - sea you -
Nov.17.2019 - Fukaura, Aomori

 三十数年来生まれ育った岩手県を飛び出して青森県に職場を移し、1年の半分以上を津軽の地で過ごすことになった私。そりゃあ3時間くらい車を運転すれば実家に帰れるので、望郷の念とか、そういう感覚はあまりなく……むしろ信長の野望ふうに言えば、自国の領土が増えたという感じになっています。まぁもともと津軽は南部氏の領土だったわけですからね。なんていうと津軽の人に怒られるかな。
 
 それはほら、4年半もいるうちに、青森県内のこともだいぶん好きになったってことですよ。それだけ身近になって、ある意味ホームに近い感覚になってきたってことですよ。確かに雪深く、半端なスタッドレスタイヤじゃ歯が立たない冬の厳しさには閉口しますが、それを受け入れて生きていくのが青森の人たち。映画『八甲田山』はすでに3回くらい見ましたが、その厳しい自然を受け入れ、何とか折り合いをつけて生きていこうと思った時、ようやく自然の美しさと恵み(おいしい食べ物)を受け入れられるのかな。そんな風に思います。
 
 そう、今回のテーマは「食」です。前回の弘前ツアーの時は「信仰」がテーマでしたが、今回は食なんです。いや本当に後付じゃなくて、最初からそういう考えでしたから。前置きが長い? いや申し訳ありません、もうちょっとだけ続くんじゃ。
 
 
 八甲田山のふもと、十和田湖温泉郷にあるホテルの料飲課で勤務する私。早い話、宿泊したお客さんが食事をする時の給仕係です。厨房で作った料理をお客さんの前に持っていく。ものすごくシンプルに言ってしまえばそういうことなんですが、ただそれだけでは面白くない。お客さんがメニューを見て想像を膨らませ、調理人が手をかけて作った料理を結びつける役割を担うのが私たちですからね。
 
 自分で料理を作ることができない代わりに、知識をもってお客さんに説明する。それこそが、私が果たすべき役目なのかなと思い、その日のメニューを読んで言葉の意味を調べたり産地についての情報を調べたり、時には現地に行ってみたり。
 
 やっぱり実際に行ってみて感じることは、大事なことだと思います。別に私が何かを仕入れてくるわけではありませんが、そうやって感じたことをプラスして話せば、それだけ言葉にも力がこもるわけですからね。
 
 というわけで今回はディナーのポワソン(魚料理)に使われている真鯛の産地『深浦町』に行ってきました。テレビ番組だったら、ここでようやく番組タイトルが入ります。この放送はご覧のスポンサーの提供でお送りします。
   


   
   さて、そもそも青森県の深浦町というのは一体どこにあるんだ!? という話から始めましょう。
 
 深浦町というのは青森県の西海岸にある街です。もうちょっと南に下ると秋田県能代市です。逆にもうちょっと北に行くと鰺ヶ沢町です。こちらは「わさお」で一躍有名になった「きくち商店」さんがある街ですね。
 
 深浦も鰺ヶ沢も隣り合って、日本海に面した、漁業が盛んな町であることには変わりないと思いますが、鰺ヶ沢は自動車専用道路が直結している分、アクセスが少し有利なのかなという気がします。逆に言うと深浦の方はなかなかアクセスが難しいです。なぜかといえば、そう! 世界遺産でもある白神山地のふもとにある街だからです。青森側と秋田側、どちらから行くにしても結構大変なんです。まさに野を越え山を越え、ようやくたどり着くのが深浦なんです。
 
 人口はおよそ8000人。地元の高校である深浦高校は、今は50キロ離れたつがる市の木造高校の分校扱いになっています。……いえ違います。「もくぞう」じゃなくて「きづくり」高校です。
 
 街の特徴は「夕陽海岸」と名付けられた海沿いの自然です。これ、海沿いに80キロくらいの道路があるんですけど、そのどこからでも日本海が一望できる――つまり日没の時にはきれいな夕陽を見ることができるんですよね。「千畳敷」とか「風合瀬(かそせ)海岸」とか、そういうスポットもあるんですが、とにかく車を走らせているだけでも楽しいんです。日が高いうちにスタートして、夕方になったらどこかに車を止めてネームエントリーです。そう深浦町は日本の『アウトラン』なんです!(ちょっと何言ってんのかわかんない……)
 
 今回のツアーは最終的に秋田市まで行くつもりだったので、日が高いうちに通り過ぎてしまい、あまり自然を掘り下げることはできなかったのですが、やっぱり海を眺めながら車を運転するのはとても楽しいです。それに「夕陽海岸」とか「風合瀬海岸」とかっていう名前がいいじゃないですか。今年はもう終わりですが、温かい時期に宿泊前提で、それもオートバイで旅をしてみたい。心からそう思わせてくれる自然がありました。いぬがみは今後も、深浦町を愛してま〜す!(いきなり新日本プロレスの棚橋選手ふうに)。



……なお、最後の2枚は秋田県能代市にて撮影したものです。もう少しとどまって深浦で夕日の写真を撮ればよかったんですが、先述したようにスケジュール上の都合があったので、「その時間にいた場所で撮る」ことをしました。あんまり天気が良くなかったので、それほどでもないような気がしますが……これもまた、この日の記録ですからね。とりあえずアップロードいたします。

さてこの後はページを改めて、いぬがみ流グルメレポートです。いや、なんというか……ただただ「私いまこんなの食べてま〜す」みたいな写真を掲載することに意味はありませんし、興味もありませんが、これは実際に行ってみて味わった者として発信しなければいけない! と思ったので書きます。インスタ映えとかフォトジェニックとか、そんな言葉とは無縁の硬派レポート。男の食レポ。最後にはソフトクリームなんか食べちゃってますけどね! テヘッ!

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