2枚目 「マニュアルレンズが教えてくれた 絞りの意味」

 さて、ここからは数年ぶりに立ち上げたエプソンの(往時の)超高性能スキャナ「GT−9700」を駆使して、ビシバシ写真を取り込みながら日々をつづって行きたいと思います。ちなみに来週にはヤフオクで落札したHP社のフィルムスキャナが来るので、今後はそっちがメインになるような気もしますが……ま、その辺はメイキングの話なのでさておいて。
 

 さて、いまさら私が語るまでもないことですが、ペンタックスSPは基本的にすべてをマニュアルで設定するメカニカル機です。一応電気的な機構による露出計はありますが、絞りもピントあわせも全部自分でやらなければいけません。

 AF機でず〜っとやってきた私にとって、それは非常に面倒くさく、また難解な作業でした。露出は機械が教えてくれるおおよその目安にあわせれば大体問題ないのですが、ピントはね。自分の眼では大体合っていると思っても、出来上がったのを見てみて全体的なボケボケっぷりに愕然とする……なんていうこともしばしばありました。

 ただ、そうやって何度も失敗するうちに、ようやくピントの合わせ方、さらに絞りの意味を理解しました。それまでは、絞りの値の大きさとは単純に『光量の多さ』を調整するものであり、絞りを思いっきり開放すれば、多少暗くてもフラッシュなしで写真が撮れるぜ、程度のものにしか考えていなかったんですよね。まあそれも間違いではないと思うんですが。

 ただ、もっと大事なことは、絞り値を調整することによってピントの合う範囲が変わって来る――すなわち『被写体深度』が変わってくるんです。
 
 

 『被写体深度』。どんなカメラの教本にも必ず出てくるキーワードです。理論的な話をすれば長くなるので割愛しますが、要するにこういうことです。
 

拡大版

拡大版

 これら2枚の画像は、あえて同じような場所から撮影しています。一応どちらもちょっぴりレトロな電話ボックスが主役ではあるのですが、1枚目は電話ボックス以外の景色が結構ボケるよう意図的に絞りを開放しています。それに対してもう1枚の方は結構絞りの数値を大きめに設定したおかげで、全体的にピントが合っています。

 印象、違ってきますよね?

 この写真それ自体が上手かそうじゃないかはさておき、私はこの写真――特に1枚目に満足しています。これらの写真は、たぶん初めて私が自分で被写体深度というやつを意識し、調整し、思い通りの結果になったからです。

 AFカメラばかり使っていた時代は、そういうことをあまり考えずにビシバシ撮っていたので、ピントは合っているものの、少々パッとしない写真になっていたような気がします。悪くないんだけどね……と。

 それってきっと、クッキリハッキリ写る範囲が広すぎて、今ひとつ意識が散漫になっちゃうからなのかな、と言う気がします。いやそうじゃないという反論もあろうかと思いますが、写真技術の立場ではなく、インプレッション的なものを冷静に振り返ると、そうなのかな、と。

 少なくとも、こういう意図的なフォーカスは、私が今まで愛用していたミノルタや高校時代のメインアームだったキヤノンEOSでは、できなかったでしょう。これはペンタックスSPそしてそれに取り付けたSMCタクマー50mmf1.4の勝利でしょう。もうアトムレンズだろうとなんだろうと、どっちでもいいや。





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