海が好きだから、宮古が好きだから
 ――浄土が浜旅行記 Sep,5,2013
  
  
  オラ、宮古が好きだ!(BGM:例のオープニングテーマ)
  
  
 まあ宮古市には海女はいないんですが、ともかく私は岩手県宮古市が大好きです。ここ数年どころではなく、まだまだず〜っと小さかったころから大好きです。
 
 県の全域が海に面している岩手県とはいえ、私が生まれ育ったのはド内陸の盛岡市。海に行く機会と言えば夏休みの海水浴とお正月に御来光を拝みに行く時くらい。そういうこともあって海に対する憧れが高まり、ひいては盛岡市から一番近い(といっても100キロ以上ありますが)宮古市が特別に大好きになったんだと思います。
 
 さて、宮古の海と言えば浄土が浜です。これは今から350年ほど前に宮古にお寺を構えていた住職が景観の美しさに感動し「極楽浄土とはかくのごとき場所なのだろうなあ」と言った・・・というのが由来という話です。手元のパンフレットから引用すると、宮古山常安寺七世霊鏡竜湖和尚と言う人だそうです(1727年没)。
 
 そんな私もあの震災以降は実際に足を運んでいませんでした。単純に『遠いから』というのもありますが、 
 「ある程度、おれのような純観光客を受け入れられる状況になったら行こう。そして観光しまくることで、気持ちを表すことにしよう」
 
 そう思っていたのです。そういうわけで、それまでは間接的な支援をしたいと思い、色々とやりました。
 
 あれから2年半くらいの時を経て、今日、久々に行ってきました。
 
 過去と現在。記憶の景色と現実の景色を両天秤にかけながら組み立て、未来へとつなげていく作業。そして改めて思ったことは、
 
 「やはり、おれは、宮古と言う街が好きだ」
 
 そういうことでした。
 
 
 思いを胸に、歩き出す
 
 
 最初は『道の駅みやこ シートピアなあど』で装備を整えてから(?)行こうとしたのですが、何せ久しぶりだったので道をよく覚えておらず・・・いきなり浄土が浜第一駐車場に行ってしまいました。レストハウスや遊覧船乗り場などがある、浄土が浜観光の拠点となる場所です。まさに「いきなりクライマックス」(byエドワード・ランディ)です。
 
 「いや、一応、道のりをカクニンしておきたかったんだ」
 
 今回の小旅行に行く大義名分として連れてきた弟者(函館から夏休み帰省中)にそんな言い訳をしつつ車を降りて目に飛び込んできたのは、初めて見る『浄土が浜ビジターセンター』と・・・すでにその役目を終え、ひっそりとたたずむ『浄土が浜ターミナルビル』でした。
 
 
 
 ここはあの震災が来る前は遊覧船の切符売り場があり、みやげ物店があり、食堂がある総合観光拠点でした。小学生のころに兄者ともども『ダブルドラゴン』をやり過ぎて散財し両親に怒られたり、タイトーの昔のクレーンゲーム『ティンクルティンクル』のアームの弱さに憤激したり。社会人になった後は遊覧船で山田まで行ってすぐに引き返してきたり、平日の午後2時と言う閑散度MAXの食堂でひとりラーメンをすすったり。そんな悲喜こもごもの思い出が詰まった場所です。いや悲ばかり書き連ねたように思われるかもしれませんが、こういうことも今にして思えば、とてもいい思い出です。これは別にターミナルビルが閉鎖になったからではなく、本当にそう思います。
 
 一方の『ビジターセンター』というのは、・・・え〜と・・・
 
  (パンフレット確認中)
 ・・・どうやら環境省が整備した場所だそうです。陸中海岸国立公園あらため三陸復興国立公園の中核施設として作った場所で、大変にこぎれいで、それでいてなかなか面白い建物です。特に2階の『陸中海岸ガイド』のフロアは、海だけではなく陸地も含めた内陸から海岸への移り変わりが非常に凝ったデザインで紹介されており、32年来の地元住民である犬神もウオーワオーと感嘆してしまいました。なお室内にはXBOX360のコントローラで操作する地形鳥瞰ビューアがあります。高度や角度も自在に変えられるので、鳥か飛行機か、はたまた何とかマンのように自由自在に空を飛びながら景色を眺めることができます。
 
 私がいないうちにできた場所なので、思い出などは当然ありませんが、確かによくできた場所です。これから、たくさん来て好きになりたいと思います。
 
 
 海でラーメン、だから磯ラーメン
 
 
 さて、ビジターセンターから波打ち際に近づき、最初にあるレストハウス『浄土ヶ浜マリンハウス』というところに来ました。
 
 ここでのウリは「サッパ舟」という小型船に乗って『青の洞窟』に行くツアーですが……今回はちょっと立て込んでいたので、これに乗る代わりにラーメンを食べることにしました。ちょうど時間的にもお昼時だったのでね。
 
 全国的なものなのかどうかわかりませんが、宮古では『磯ラーメン』という名物があります。要するに海産物をたくさんトッピングしたラーメンなんですが、札幌で味噌ラーメンを食べるように、博多でとんこつラーメンを食べるように、雰囲気があるとさらにおいしく感じるものですよね。こうすることで、わずかでも支援につながるわけですし。
 
 ひとまず2人前の注文をし、待っている間、店の中をぐるりと見渡すと……以前にここにやってきた人たちのメッセージが壁いっぱいに描かれていました。力強い言葉あり、可愛らしいイラストあり、眺めているだけで胸が熱くなってきます。
 
 私たちはといえば、まあせいぜいこの場に足を運んでラーメンを食べるくらいのことしかしませんが、それでも「何かをしたい」とずっと思っていたから。その気持ちをほんの少しだけ、こうして伝えることができた……と心の中で思いつつ食べ終え、その場を後にしたのでした。
 
 
 新・道の駅「シートピアなあど」
 
 
 本来であれば、そこからさらに海沿いを歩き遊覧船などに乗ってみたいと思ったのですが……それより先に、行ってみたいところがありました。それが『シートピアなあど』です。
 
 ここは震災の影響でしばらく休業していたのですが、今年の7月からようやく再開することができた場所です。そのことはIBCのテレビやラジオ放送で聞いていたので、ぜひ見てみたいと思っていたのです。
 
 ちょうど、復興支援関連でしょうか? 団体さんがロビーのあたりでワイワイとにぎやかに話しておられるのを横目に見つつ、お店の中をぐるりと回ってみました。ごく簡単に言うと、海産物や野菜などが並ぶ産直フロアと一般的な土産物が並ぶフロアがあります。
 
 正直なところ野菜はどれがどの程度安いのか詳しくないし、海産物はこの後「魚菜市場」に行くし、土産物に関しても今回はとある野望を秘めていたので、ここで買い物をすることはしませんでした。確かに予算はかなり多めに見積もってきたものの、無限ではないですからね。オリジナルキャラのTシャツとかは少々心が惹かれましたが、まあ今回のところはスルーしました。
 
 ただ、やはりオープンしたばっかりということもあって、すごく綺麗なところでした。もっと時間があれば、色々と見て回ることもしたかったのですが、今回はとにかく「どんなところなのか」見たかった、という目的を果たせたので、とりあえずヨシとしましょう。
 
 
 遊覧船
 
 
 今回、私がどうしても乗りたかったのが遊覧船でした。
 
 何せド内陸に住んでいるもので、海にも船にも縁がない私。そういう事情もあって船に対する憧れというか、並々ならぬ思いがあるのです。
 
 それにプラスして、震災後にニュースなどで流れた情報。そんなものを見ているうちに気持ちがどんどん募り、ようやく今回その思いがかなったというわけなんですが……この日はちょっと風があって、私がイメージしていたよりも少々激しく揺れました。くわえて私の知らないうちに弟者は船嫌いになっていたようで(ただしフェリーなどの大型船ならOKらしい)、色々と申し訳ないなという気持ちも少しありましたが、まあ今日は特別に許してもらうことにしましょう。
 
 そんなわけで少々ダイナミックな船旅になってしまったのですが、ともかく久々に乗った船はとても楽しかったです。ガイドさんの解説を聞き、ウミネコに餌付けして、数百年前から語り継がれる美しい島々を眺める。これこそ私が幼少のころからずっと続く『宮古の海』のイメージです。もちろん写真も撮りまくりです。
 
 
 ちなみに元々ここには複数の遊覧船があったそうなんですが、あの震災で破損してしまって、今はこれが唯一の船だそうです。というのも、津波が来る直前に船長が機転を利かせ、船に乗って沖のほうに逃れたので、何とか被害を免れたというんですね。その後はしばらく海上で待機し、戻ってきたということなんですが……やはりそういう話を聞くと、胸が熱くなります。
 
 そんな話を聞きながら、ある場所でまだ修復していない防波堤なども見ました。
 
 言うまでもなく防波堤といえばコンクリートの塊です。重いとか、そういう次元ではありません。それでもガタガタにしてしまうのだから、つくづくあの津波は恐ろしい力を持っていたというわけです。
 
 壊され、半分くらい海に沈んでしまったまま2年以上も放置されている姿を見ると、まだまだ復興途上なのだ……と思いました。いやもちろん、被災地のことは毎日メディアで報じられているのを見ていましたし、そういうのを見ない日でも、考えない日はありません。ただ、それでも実際に目の当たりにすると……ね。
 
 世界レベルで見れば色々と救援・支援を必要としている場所がたくさんありますが、まずは地元からだな。

 遊覧船乗り場に戻ってきて、6年前に来た時はいらっしゃらなかったトシさんこと土方歳三副長の等身大パネルと2ショット写真を撮りながらそんなことを思った私でした。……もしかしたら、いらっしゃったかもしれませんが……まあ当時はそこまで強い興味を持っていなかったので、何とか勘弁してください。
 
 
 風雲を抱き、大義を果たさんがため
 
 
 そんな熱い思いを胸に立ち寄った『浄土ヶ浜レストハウス』。ここで私が今回の旅行でひそかに抱いていた野望を果たす時が来ました。
 
 『灯みやこ』……というキャラクターを皆様、ご存知でしょうか。
 
 これは……上手に説明できないのですが、『ANGEL★COMPANY』というまんがサークルで作られたキャラクタです。このキャラクタを活用して防犯や観光PRなど様々な地域社会貢献を趣旨としたプロジェクトを行っているのですが、そのプロジェクト展開にあたって、絵師・彩色・企画立案・広報支援など様々な立場で参画しているボランティアスタッフで構成、組織されているのが「TEAM385」……だそうです。
 
 まあ、あまり詳しくはわからないのですが、とにかくこの子は宮古のキャラクタなのだな、というのが私の解釈です。秋葉原でも日本橋でもなく宮古の子なら、私も素通りするわけには行きません。私の宮古に対する思いを、灯みやこを通じて伝えることにしましょう。……という名目が立ったので、3種類あるポスターを全部買いました。さらに弟者も、こういった類のキャラクタが好きな友人への土産とする、ということだったので、合計6枚のポスターを買いました。いや、これも復興支援ですから!
 
 
 その後は車を市内中心部に向けて走らせ、『魚菜市場』というところに行きました。ここもテレビなどで見て、一度行ってみたいなあと思っていた場所です。
 
 中は、魚屋に肉や野菜など、とにかく多くの専門店がひしめく場所です。『市場』ということだったので、まずはおおよそイメージ通りといったところなんですが、それでもこういったにぎやかな雰囲気は大好きです。もっとも、これらの生鮮食品のほかに菓子類や雑貨類を置いている店もあったのは意外でしたが。
 
 あとはプロレスファンとしてうれしかったのが、以前にここで開催された新日本プロレスの興行にちなみ、選手たちの写真が飾られていたこと。真壁・棚橋・中邑・オカダといった大スターが宮古に来て、熱い戦いを繰り広げてくれたのだな……と思うと、本当に胸が熱くなる思いです。よくテレビで外国の有名人(レディー・ガガなど)が来日した時に涙を流して喜ぶ人の姿がいますが、ライブで見たら私もそうなるかもしれません。
 
 ……ただ……。
 
 本名で活躍している選手は当然『棚橋弘至』『中邑真輔』とフルネームですし、リングネームなら『真壁刀義』『オカダ・カズチカ』という風になっています。また『邪道』『外道』というのも、そういう名前で活躍しているのでいいんですが、われらが小島聡選手のところは、
 
 「小島 選手」
 
 という風になっていました。……聡はどうした聡は! 何で小島さんだけ苗字だけなの!? と、ちょっとズッコケてしまいました。ま、まあ、いいんですが……。
 
 

 と、大体こんな感じで一日いっぱいかけて観光してきました。
 
 こうしてみると、改めて私は海が好きというか……宮古という街が好きなのだな、と思いました。
 
 実際に行ってから、もう随分と時間がたってしまいましたが、仕事が大変で気持ちが落ち込みそうな時なども、この宮古に行った時のことを思い出すと、不思議と元気が出てきます。
 
 宮古に限らず沿岸の街はまだ復興途上ですが、今回の旅行でそれを応援したい! という思いがいっそう強くなりました。そういうわけで犬神は三陸の街を応援します。宮城とか福島とかフィリピンとかアフリカとか、色々と思うところはありますが、まずは地元から……ね。



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