ふしぎの国の北リアス2012――あの子に会いたくて
May,4,2012

 1.三陸の街を愛する者として(かなり広い意味で)
 
 私が三陸鉄道を使って岩手県久慈市に行ったのは、2009年。もう3年も前のことです。
 
 また来年も来よう。そう思っていましたが、2010年はかなわずじまいでした。
 
 年が明けて2011年。また暖かくなったら行ってみよう。そう思っていた矢先に…… あの震災が沿岸の町を襲い、私が愛する沿岸の市町村は壊滅的な被害を受けました。 とても観光どころではない。そういう感じでした。

 あれから1年以上が経ち、まだまだ復興には時間がかかるものの、とりあえず現地に行って観光することが 支援になる。そういう段階まで来たので、いずれまた沿岸に行ってみたいなあ。そう思っていた矢先の ことでした。

 岩手日報の片隅に載っていた記事。それは「道の駅 くじ」で行われるキャンペーンの告知と、 新しいキャラクタのイラストでした。

岩手三陸久慈市をめぐる ドライブラリー2012 パンフレット(pdf)

 ……来ましたね。美少女キャラですよ。萌(も)えキャラですよ。こういうことをされたら、黙って いられません。名前公募キャンペーンに参加するためには、道の駅で2000円以上の買い物をしなければいけないといいます。 そこまでされたのでは、もはや3年ぶりの久慈市大遠征、不可避のものとなりました。

 まあ、そういうわけで最初のきっかけはコレなんですが、そのための情報を調べていると、色々と興味深いイベントをやっていることもわかりました。

鉄道イラスト展「明日の風を牽くために」〜岩手・東北 鉄道のある風景〜
震災復旧写真展〜JR八戸線 三陸鉄道 久慈市内 野田村〜

ええ、震災復興関連の写真展と、 鉄道画家・松本忠さんの鉄道イラスト展です。……さすがに彼女の名前の投票権を手に入れるためというのじゃ アレですからね。きちんとした目的があって、そのついでに(?)投票権を手に入れるというのであればなお よろしい。そんなこんなでさまざまな理由付け動機付けをして、愛車・ファミリアに乗って北へ向かうことに なったのでした。


 2.道を間違えたから見えたものもある


 というわけで朝8時30分に家を出て、国道4号線をしばらく北上したあと、葛巻町経由で久慈市に向かうことに した私。……しかしながら、この途上でいきなりポカをしてしまいました。

 本来、ある程度進んだところで国道281号線に乗り換えなければいけなかったのに、何も考えずにボヤーッと 国道340号線を走り続けた私。そのために目的地の久慈市からはぐんぐん遠ざかり、気がついた時には岩泉町、 久慈市から40キロほど離れた場所にいました。

 そこまで気づかない私も私なのですが、来てしまったものは仕方がない。仕方がないからこのまま沿岸の様子を 眺めながら北上しよう。そういうことになったのでした。

 まあ、そうはいっても私が通ったのは半分くらいが山の中を通る国道45号線。実際に海が見えるようなところは 普代村から野田村のあたりでした。

 その中でも特に衝撃的だったのは、野田村のあたりでした。

 海沿いの平地に積み上げられたがれきの山。1年以上も経っているのに、まだまだまだまだこんなにがれきが あるんだな……というのは、もちろんテレビの報道で知っていましたが、こうしてライブで見てみると、なんとも いえない気持ちになってしまいます。

 まあ、少しずつがれきを受け入れてくれる市町村も増えつつあるようですし、これからゆっくり時間をかけて、 がれきを片付けていくしかないですからね。私も日々できる限りのことをしよう。そう思いました。


 3.久慈市イチ盛りだくさんのご馳走


 そんな思いを胸に秘めつつ、ようやく久慈市にたどり着きましたが、そのころには雨が激しく降り、 暴風警報が発令されたことがコミュニティ放送で流れていました。もはや観光どころではない状況でしたが、 ここまで来て何もせずに引き下がるわけには行きません。むしろこんな状況だからガラガラじゃないのかね? なんて思っていたら、意外やまた意外、駐車場は満車状態で入庫待ちの車が何台もズラリと並んでいました。

 こりゃ〜参ったな、ということでその場を離れて10分ほど駐車場を探し、ぐるぐる回った挙句に久慈駅の 裏側にある市営駐車場に車を止めました。ものすごくいい位置でありながら、駐車料金は5時間で200円という 驚異的な金額でした。

 そのあと、5分ほど街中を歩いて3年ぶりにやってきた「道の駅くじ やませ土風館」。何はともあれ時間的にも お昼だし、ご飯を食べようということになりまして。その場にあった「産食体験館山海里」さんに入り、ここでの 名物をいただくことになりました。

 今回私がオーダーしたのは「開運丼」というもの。これはどんぶりの中身の6割以上を占める超巨大なかき揚げ をご飯の上に乗せたシロモノで、天ぷら大好き野郎の犬神にとってはこの上ないごちそうでした。あまりにも 大きすぎて、いったいどうやって食べたものか格闘しながら食べましたが、それくらい豪華なかき揚げでした。 ちなみにこれを注文すると、もれなく縁起のよさそうなティッシュとおみくじととんぼ玉つきのストラップが もらえます。

 また、これ以外にもマグロ、ホタテ、イクラから短角牛のステーキまでをひとつのどんぶりに放り込んだ 無法のゴージャス料理「琥珀丼」というのもあります。お店ではこれが一番人気だそうです。これをちゃんと 商品にするところがスゴイですね。いやはや、本当にそう思います。

 そんなわけで、空腹を満たして落ち着いたところで、いよいよ今日の本題に取り組むことになりました。そう、 彼女の名前投票権をかけた一大勝負です。そのための買い物のネタはもちろん、三陸鉄道グッズ。


5. 三鉄グッズ2012
 

 今はオンラインショップでも色々と注文することができますからね。みやげ物店内にあるグッズショップ 「久慈っこ本舗」さんに並んでいるものも、大体は見たことのある代物でした。もちろん、去る4月1日に「入社」 した2人の新入社員のグッズもありました。

 もっとも、今はもうカタログ落ちというか、前はオンラインショップで買えたけど今は買えなくなったもの とかもたくさんありました。駅名キーホルダーとか、復興祈念キーホルダー(仮称)とか……あとは 「久慈ありす」と「釜石まな」の手ぬぐいとかですね。

 そして、もしかするとオンラインショップ上では見たことのない? ポストカードセットなども ありました(非萌え)。ポストカードコレクターの私にとっては、これは非常に魅力的な代物でした。

 そんなこんなで、どれを買うのか? ということで冷静に品定めをする私。

 とりあえず、ポストカードは買いです。あとは復興祈念キーホルダーも、買おう買おうと思っているうちに オンラインショップから消えてしまったので、これをいい機会として買うことにしました。

 一方で私が全面的支援を表明している「久慈ありす」「釜石まな」グッズについてなんですが、実はこの2枚の 手ぬぐいはすでに持っているんですよね。そしてもうひとつ、萌黄色ベースのマフラータオルに関しては…… これは、あったかどうか、よく覚えていないんですよね。商品紹介のポップには「NEW!」という文字が躍って いますが、前に通販で買ったような気がするし……でもあれは色違いだったような気もするし?……と、しばらく 逡巡。

 その結果、「色違いで持っていなかったらもちろんOKだし、もし重複しちゃったとしても、 投票権を得るためには仕方ないことだし、久慈市の経済発展に貢献できるだろうから」

 という、きわめて強引な理論でねじ伏せて購入決定。レジに持っていく途中で見つけた「久慈ありす」仕様の ミネラルウォーター(ラベルを変えただけ)も1本手に取り、ドサドサッとカウンターに置きました。


 龍泉洞の水(久慈ありす仕様):120円

 三陸鉄道・復興祈念キーホルダー:400円

 久慈ありす・釜石まなマフラータオル:1500円

 ポストカードセット(非萌え):500円


 しめて合計2520円のお買い上げとなりました。これで条件は達成です。このあとすぐにステッカーと投票の ためのチケットをもらい、今回の旅行の目的は果たされたのでした。めでたし、めでたし。


6.もうひとつの目的・震災復興写真とイラスト展を見る 
 

 って、本当に帰りそうになってしまった私。違う違う、写真展とイラスト展を見に来たんですよ。

 写真展の方は、北リアス地域の4市村(久慈市、野田村、田野畑村、普代村)の被災直後と現在の状況とを 並べたものでした。……と言えばそれで終わりなんですが、何度も見たはずなのにこうして写真で見てみると 胸が締め付けられるというか、いたたまれない気持ちになってしまいました。自然災害だから仕方がないと 言えばそうですが、それだけで済ませられないのが人情ですよね。

 でも、一方でそういったがれきが片付けられて、何とか街らしくなっている様子の写真を見ると、いくぶん ホッとした気持ちになります。もちろん、まだまだ復興に向けて動き始めたばかりですからね。実際に野田村で 見たように、まだまだ片付かないがれきとかが山積みになっていますし、本格的な復興にはあと何年もかかる ことでしょうけど、とりあえず歩く道はできたのかな、と思うのです。そういうことを感じることができた 写真展でした。

 そしてもうひとつのイラスト展についてですが、これがまたすばらしい作品ばかりでした。やっぱり写真では なくイラストだと、描いた人の気持ちがよりたくさん注ぎ込まれているような気がして、非常に暖かい気持ちに なれるのです。

 著作権のあるものなので、もちろんここで画像を公開したりすることはできませんが、特に気に入ったのは、 さわやかな青空のもとたたずむ小石浜(現恋し浜)駅と、普代村の堀内−白井海岸あたりを走る復興列車の姿を 描いたもの。タイトルはそれぞれ「夏空への階段」「リアスの風」といいます。

 これらのイラストはそれぞれポストカードとなっていたので、ここでもこの2枚を購入。かなり大量に ポストカードを仕入れることができました。改めて、めでたしめでたし。


7. まちなか水族館を見る


 かつて久慈には「もぐらんぴあ」という水族館がありました。トンネルの天井部分をガラス張りにして、まるで 自分が水中にいるような感覚で海の幸……いや海の生き物たちを眺めることができる、というのがウリでした。

 しかしながら、これが震災で津波の被害をもろに受けて施設は壊滅。ごく一部を除いて、ほとんどの生き物は 死に絶えてしまいました。

 しかしながら、それで終わらないのが「もぐらんぴあ」。行政やほかの水族館や「さかなクン」の支援を受け、 街の中にある空き店舗を利用して「まちなか水族館」として復活。何度もニュースで報じられていたので、私も 一度見てみたいと思っていたのでね。道の駅に寄って駐車場まで歩きがてら、立ち寄ることにしたのでした。


 入って最初に見ることができるのは、「さかなクン」提供のハコフグを初めとする珍しい魚たちでした。

 ハコフグというのは、私が言うまでもなく「さかなクン」がかぶっている帽子のモデルになった魚で、その名の 通り長方形に近い形をしています。私が思い描く一般的な魚のイメージはもっとスマートか、はたまた丸っこいか、 といったところだったので、なんとも面白いなあと素直に感じました。まさにギョギョギョ〜! という感じです。

 フロアの奥のほうに進むと、久慈近海に住んでいるミズダコやカニなどの身近な生物たちがいました。どちらか というと鮮魚コーナーの生け簀のように見えなくもありませんが、あくまでもここは水族館。今日のタコは活きが よさそうだ、とかではなく、海の中での生態を色々と考えながら見てきました。

 絶対的な種類や数でいえば、かつての「もぐらんぴあ」や他の水族館と比べるべくもないのは当然ですが、 中心街にあるのは逆にほかの水族館にはない強みです。さらに、実際に魚と触れ合ったりするコーナーもちらほら ありました。実際、子どもたちがたくさん来ていたのは、祝日だからというだけではないでしょう。なかなか 楽しい施設であると思いました。


 総括


 帰りは本来通るはずだった平庭高原ルートを走りました。海沿いの街に比べると山と田んぼばかりで少々退屈 してしまいましたが、まあ最短距離なのでそれに関してはよしとしましょう。

 結局、今回の旅の目的とか成果はなんだったのか? というと、自分でもきちんと総括できないのですが、 大きく言ってしまえば「久慈市のために何かをしたい」というところでしょうか。観光に訪れ、食事をして、 地元のショップでみやげ物を買う。やってることは完全に観光客ですが、これもひとつの支援のかたち。 なかなかの成果であったと思います。

 南三陸とか北三陸とか、地域でそういうのを分けるとすれば、やはり行く機会が多い……そして何かと思い入れ の深いのが北三陸な私(釜石や大船渡は、地理的な理由からなかなか行く機会がないので)。3年ぶりに訪れた 久慈市は、なかなかどうして元気であると思いました。

 もちろん、完全に元通りの生活になるためには、あと何年もかかると思います。そういった復興支援の意味合い ……も、ありますけれど、何よりも海が好きで、沿岸の街が好きだから。また行きたいと思います。


 「東西南北方見聞録」に戻る

 Indexに戻る