不思議の国の北リアス! 会いに行こうか『久慈ありす』!?
――三陸鉄道旅日記



 序:
 ロマンで経営は成り立たないから……


 我が街・岩手県にはJR東日本以外の鉄道が2つあります。

 ひとつは、盛岡駅以北の在来線を管轄する「いわて銀河鉄道」。東北新幹線が八戸まで開通したのを機会にそうなったので歴史はまだ浅く、まだ10年も経っていません。

 もうひとつは、岩手県の沿岸を南北に走る「三陸鉄道」。これは私も知らなかったのですが意外と歴史が古く、私と同じ1981年に設立、1984年に北リアス線、 南リアス線として開通したのだそうです。

 ところが毎年のように赤字経営だの廃線危機だの強風でひっくり返っただの(1994年だけです!)と不穏な話ばかり聞こえてきて、私も同じ岩手県民として何とかしてあげたいと 小学生の頃から思っていました。

 もっとも私は内陸オブ内陸、盛岡市在住の人間なので、電車に乗るためには、まず車でおよそ100キロほど東に行かなければならない。容易な話ではありません。 なので気持ちは穏やかではないものの、まあ、どうすることも出来ないまま私も28年、三陸鉄道も開通25周年記念キャンペーンを繰り広げていたのでした。


 そんな私の気持ちに変化が訪れたのは、初めて自分の運転で久慈市に行った時から(参照1)。それまでは 自分にとっては、同じ県にありながら、まず行くことがないだろうと思っていたのですね。あまりにも遠すぎるから。

 で、1度行ってみたのはその通りなんですが、実際に街中を歩くこともほとんどなく……そのため、きちんと自分自身で「久慈市」というものを知りたい、わかりたい。そんな気持ちがあって、もう一度(か2度か 3度か、とにかくたくさん)行ってみたいと言う気持ちが募っていたのでした。


 あとは、「これ」ですね。

 「これ」……もう、「これ」は……わかりました、 私の負けです。もう認めるしかないでしょう。可愛いです。可愛いと思います。可愛いって言うしかないだろう。わたし(犬神)はあえて断言しますが、「久慈ありす」と 「釜石まな」は可愛いです。大好きです!

 と、誰も何も言っていないのに勝手にカミングアウトしてしまいましたが、たとえばこれが東京とか大阪とか名古屋とか、はたまた近くでも秋田とか青森とか、極端な話「いわて銀河鉄道」でも、ここまでは ならなかったでしょう。

 「彼女らを支持することが、三陸鉄道に少しでも利益をもたらすのならば」という、むしろ三鉄LOVEな気持ちもあるのでしょう。いやむしろ、 そっちが根本的な気持ちかも?

 そんな気持ちをハッキリ証明させるためにも、やはりこないだ久慈市内の物産館で見た、あのグッズを買いに行かなくちゃならんのかな……とかと思いながら、三陸鉄道の 公式サイトを眺めていると、こんなものが発売されると。

 ……こうなってくると、もはや迷う余地なし。9.5久慈大遠征は避けられない! ということになったのでした。

 当初はマイカーで東北東に進路を取り、直接駅前まで乗りつけてクリアファイルだけ買って帰ろうと思っていたのですが、それよりも真東にまっすぐ走って電車で北上した方が 経済的肉体的ひいては地球環境のためにも三陸鉄道のためにもいいんじゃないのかね? と考え直し、前日にサッと運賃や時刻表を検索。そして翌朝、私にしてはややゆっくり気味に スタートしたのでした。


 1.犬神、電車の時間を勘違いする――小本駅周辺


 とりあえず線路のあるところまで行かなければいけない。てなもんで内陸から東へおよそ100キロ。これはいつも通りの峠道を爆走します。決して楽なものではありませんが、 それでも何度も通った道ですので、それなりに進んでいきます。

 ココで少し心配だったのは、どのタイミングの電車に乗れるのかな? ということ。基本的に、1時間に1本くらいのペースで走っているっぽいことは把握していたのですが…… 実際に行ってみると、「2時間に1本」のタイミングがあることに気づきました。9時台の電車が出たら、次は11時台とかって。

 そして私がたどり着いたのは10時半くらい。ちょうど真ん真ん中だったのです。

 ……もう少し詳しく時間を調べておけばよかった。あるいは、もう少し早く出ていればよかった……と、 思わないこともなかったのですが、それほど落ち込みはしませんでした。アクシデントもまた楽しからずや。こんな機会でもなければ、ゆっくりこの町を見ることもなかったでしょうからね。 といいほうに解釈。ひとまず建物を出て外の景色を眺めてみることにしました。

 


 小本駅……この画像を見るとそう言っていいのかどうかという気もしますが、中は土産物屋と観光案内所が一体となった場所で、ついでに切符も売ってます、という ような雰囲気。でもって普段は照明も消して無人状態で、電車の時間が近づくと職員の人が来て切符の発行をするというものなのです。





 そして外に出てみると、あたりは……せいぜい道路をはさんだ向かい側にラーメン屋があるくらいで、あとは山と森と田んぼばっかりの、何にもない場所なんですね。

 いやいや、ここは初めて来た場所ではないですし、事前に下調べもしてきたので、本当に何もない場所ではありません。この建物からさらに東に10分ほど歩くと、 小本温泉というものがあります。車で行けば当然もっと早く着きますが、これまたせっかくなので10分からの道のりをノンビリ歩くことに。本当は久慈に行って帰ってきてから 行こうと思ったんですけどね……。


 2.犬神、竜王のご加護を受ける――小本駅周辺・小本温泉


 小本温泉・黄金八大龍王の湯という、なんだかものものしいネーミングのこの温泉は、ちょっと調べたところ、オーナーが井戸を掘っていたらたまたま温泉が出ちゃった、という『こち亀』みたいなノリで オープンしたらしいです。ちなみにオープンしたのは1995年とも1999年とも書いていて、なんだかよくわかりませんが、ともかく90年代の温泉のようです。

 入浴料は600円。ちなみにサウナは別料金なのですが、後から入ってきたオジサンによると、ここのサウナはどうも客が来た時に初めて火を入れるみたいなんですね。だから お金を払わないとサウナ室はただの薄暗い部屋なのです。……それでいいのかなぁ?

 まあ、あえてお金を払ってまでサウナは……という気持ちもあったので、そちらはパス。まだ10代っぽい受付の女の子に戸惑いつつも、浴室へ直行。ちょうど私が入った時、 前に入っていたお客さんたちが出るタイミングだったので、つかの間の貸切風呂となったのでした。

 水温は割と熱めで、「あつつつつっ!」と(誰もいないから)声をあげてしまうくらい。まあ、なかなか気持ちいいのですが。でもって浴槽は、源泉を最短距離で流しこんでいる 場所と、大人数がいっぺんに入れるそこそこ広い場所、さらにヒノキで囲まれたいい匂いのする場所(弱い泡も出ている)の3ヵ所。プラス定番の露天風呂&水風呂といった感じです。

 私がちょっとびっくりしたのが……『水風呂』。なんか一般家庭用のバスタブをそのまま無造作にドーン! と置いただけのような風情のなさ。せっかく露天風呂はそれらしく 石を削りだして作ってるのに(他の温泉に比べて、割と浅いような気がしました)、これって……雰囲気ぶちこわしじゃないの? と苦笑いしつつも、しっかり活用させて いただきました。

 まあシンプルそのものな場所ですが、逆にケレン味がないというか、純粋に温泉を楽しむには非常にいい場所かもしれません。 駅から歩いて10分で行けると言う立地条件もなかなか。あんまり旅をしていないのに、序盤からいきなりひとっ風呂浴びてしまったのですが、 まあご飯も満足に食べられないくらい(それまでの日常生活で)疲弊してしまった心身をリフレッシュし、さらにその後の大忙し強行スケジュールを切り抜けられた のだから、竜王様の霊験あらたかと言ったところでしょうか。

   営業時間は9:00〜22:00です。ちなみに私はまったく気づきませんでしたが、飲用/入浴用の温泉水の販売もしているそうです。問い合わせは、(株)小本温泉 0194-28-2121へ。


 3.犬神、にわか鉄道ファンになる


 さあ、そういうわけで風呂で汗を流し、直後にまた10分からのウォーキングで汗を流し、再びたどり着いた小本観光センター/駅。今度は受付のお姉さんがいたのですが、 本当にココで切符を売ってくれるのか? と不安な犬神、しばらく挙動不審気味にうろうろしていたものの、窓口の横に確かに『乗車券売り場』と書かれていたのを見てひと安心。 みどりの窓口でさえ自動化しているこの時代に「久慈まで」と口頭で伝え、ついに切符を手に入れたのでした。

 



 当然、切符の後ろは真っ白ですが、ビックリしたのはこの切符の素材がちょっと「硬い」こと。帰りに久慈駅の自動券売機で買ったのは、当然いつもの薄っぺらいもの だったのですが、こちらは硬めのボール紙(だと思います)で出来ているのです。こういうところも含めて、ちょっとレトロでいい雰囲気がしますね。






 さて、いよいよ三鉄初体験の時が目の前に迫った犬神、誰よりも早くホームに立ち、電車が来るのを心待ちにしていました。……テレビでよく聞くは鉄道マニアの野郎、 および婦女子諸君も、こんな気持ちでカメラをたずさえ待ち構えているのかと思うと、なるほど、わかるような気がします。

 到着10分くらい前になると、どこからともなく続々と人が。おお、利用客もそこそこいるんじゃないか。っていうか、私がホームに早く来すぎ? と、思わぬところで ド素人ぶりをさらけ出してしまった南倍南のごとき犬神ではありましたが、ともかく11時49分、当初の思惑よりも大分遅くなったものの、いよいよ電車でゴー、終点下車の旅が始まった のでした。


 4.犬神、車窓からの景色に見とれる――三陸鉄道車内(往路・久慈行き)


 地図上で見ると確かに沿岸を走る列車ではありますが、実際的にはトンネルをガンガン駆け抜けることも多いこの列車。特に小本−島越間には長〜いトンネルがあります。 このあたりって車で走ると、アップダウンや急カーブがあって、非力な私の愛車ではもうヒーヒー言ってしまうような場所なんですよね。そんな風に消耗しながら走るよりも、 一本道でノンストップで快適に移動できる三陸鉄道の方が、日常生活の利便性を考えても分があるような気がします。景色が何も見えないし、気圧の関係で耳がちょっと おかしくなりましたが、それでもね!

 乗客の雰囲気は、まあ土曜日だからでしょうかね、旅人が多いような気がしました。みんなデジカメを携えて、要所要所でパチパチと……。まあ、とりあえず犬神は 初めてで、電車に乗っているだけで十分に楽しく、要するにそれどころではなかったので、行きは「どんなところで、どんな景色が見えるのか」を確かめるのが精一杯でした。

 あとは、アナウンスによれば関西の方からの団体客がごっそり乗っていたみたいで、ボックスシートの向かい側に座ったのはそのツアーの添乗員さん(JTBの方)でした。 そしてその団体さんに配慮してなのか、途中2箇所ほど眺めのいい場所で電車を止め、景色を眺めたり写真を撮ったりしてください、というサービスを提供してくれました。

 これは今回の旅行における最大のサプライズでした。正直なところ三鉄と言えど、久慈までの移動手段のひとつであって、流れる景色を眺める楽しみしか想定していなかったのです。 わざわざ電車を止めてくれるなんて、JRじゃありえない話ですよね。

 私は山側の通路に座っていたので、何となく反対側の席の人たちに遠慮して遠目に眺めるにとどめたのですが、確かに綺麗な景色です。こうしてみると やはり、ただの移動手段というわけではなく、こういった観光バスっぽい要素も含んでいるのだな、と感心しきりの犬神なのでした。

 まあ、そんな感じで景色を眺め、時折止まる各駅の様子をチラリと眺め、飽きることなく小一時間ほどの電車の旅は終了。12時44分、いよいよ今回の目的地である久慈市にたどり着いたのでした。


 5.犬神、駅と街中を行ったり来たりする――久慈市内


 宇都宮の駅を降りると 都会の香りがする、なんていいますが、久慈の駅を降りて感じた香りは……なんか、こう、やっぱりレトロな感じですね。

 あわただしくて写真は撮れなかったのですが、駅のまん前には『駅前デパート』という、盛岡バスセンターと真っ向勝負できるくらいレトロな建物があります。 ただしこちらは1階にわずかにテナントが入っているだけで、何やら解体も検討されていると言う、非常に切ない噂も漂っているそうです。

 メインストリートは確かにそこそこ綺麗なのですが、土曜日なのに(土曜日だから?)シャッターを閉じている店もちらほら。さらに言えば、一歩メインストリートを 外れると昭和の雰囲気を残したまま遺跡と化しているレトロな建物の数々。車でざっと通っただけではわからない世界がそこには広がっていたのでした。


 とりあえず向かったのは久慈の経済の中心地(たぶん)「道の駅 くじ」。駅前の広場に立った時、「そうか、こないだ車で行ったのは鉄道の駅じゃなくて道の駅だったんだ!」 と、今にして思えば至極当たり前のことなんですが、その時点では初めてのことのように驚愕。「果たしておれは、たどり着けるのだろうか……」と途方に暮れていたら、 目の前に「徒歩3分」という巨大な看板が。こうして今考えてみると相当アンポンタンですね私。

 さて、とりあえず最短距離のメインストリートをトコトコ歩きたどり着いたのは『やませ土風館』。こないだの記事では触れませんでしたが、ここは産直やグッズショップ、地酒に力を入れた酒屋などの 物産館と観光案内所が融合した、規模も賑やかさもかなりのレベルの場所です。さらにその周辺には飲み屋食い物屋もたくさんあって、私にとっては今のところ久慈の商業の 中心って印象です。

 あと、今回は時間がなくて行けなかったのですが、ここにはちょっとした『テーマパーク』があります。その名も『文化教養施設 レトロ館』。個人所蔵のコレクションを展示している場所なのですが、 ただ並べているだけではなく、全体的な雰囲気も含めて作りこまれた『テーマパーク』です。しかもこれだけあって『一部』だというから、まったく恐れ入ります。

 入館料は大人300円ですが、時間さえあればぜひ行ってみることをオススメします。ナンジャタウンにも負けません(ホントかよ)。

 そして今回の最大目的を果たすために訪れたのが、物産館の中にある『久慈っこ本舗』さん。ここでは三船久蔵十段と北限の海女をモチーフにしたオリジナルグッズや、その他ファンシーなものをたくさん取り揃えています。 女の子受けがいいみたいで、私が行った時も二人連れの子らが色々と物色しているようでした。

 さて、すでに7月に下調べをした時に発見した『CD』と、『ポスター』(2枚組/25周年記念グッズのひとつで駅の構内に張り出されているものと同じものだと知ったのは、帰ってきてからのことでした)はあったのですが、お目当てのクリアファイルはどこにも ありません。確かにグッズを買いに来た身分ではあるものの、堂々と店員さんに「クリアファイルありますか」とたずねるほど厚顔無恥にはなりきれくて、 いったん外に出て携帯電話で情報を再確認。そうすると「駅の窓口で売っている」ことがわかったので、スピードウォーキングで駅まで戻ることに。

 そこで初めて、電車の時間が14時ちょっとということを確認。だとすると、お昼を食べる時間を考慮しても1時間くらいしか時間がないので、急がなきゃね。 ……とは思ったものの、窓口はあくまで窓口であって、あんまり大々的に売り出している感じがなく、どうしたものかと立ちすくむ挙動不審の28歳……。

 「この際、何も買わずに帰ろう。三陸鉄道に乗って、久慈まで来ることが出来たんだから、それでいいじゃないか」といってあきらめかけたのですが、一方では、 「これを手に入れるためここまで来たのだし、次にいつ来れるかわからない。お前は買わないのか! 今しかないぞ、クリアファイルを買うのは!」

 そんな葛藤、そして逡巡のあげく、ついに決断した犬神。ツカツカと一直線に歩き出し、事務員のお姉さんに向かって一言――

 「あの、クリアファイル、ありますか!?」

 ……人間、失格。

 その勢いで再び『やませ土風館』にダッシュしてCDとポスターを購入。フィギュア以外のここで手に入るであろうすべての「久慈ありす」「釜石まな」グッズを手に、少し遅い昼食をようやく取る ことになったのでした。

 (ちなみにフィギュアを買わないのは、「2Dの世界の住人を3Dにするのは、なんかちょっと違う感じがする」から。これは北斗の拳だろうと男塾だろうと同じことです)


 6.犬神、オバチャンと秀吉を語る――三鉄久慈駅構内の立ち食いソバ屋にて


 三陸鉄道の駅舎とJRの駅舎は、隣接こそしているもののまったくの別棟となっていまして、ソバ屋もそれぞれ別個のものがあるのですね。まあJRの方はNREの、 どこにでもあるソバ屋なので、ここでも三鉄に貢献したいと思って、そっちの方にあるソバ屋にて天玉そばを食べることに。

 これは余談なのですが、普段ならかけそば、ちょっとリッチな気分になった時でもかきあげ天そばくらいにとどめる犬神が、あえて天玉そばなんてものを頼んだのは、 「こち亀」で両さんが盛岡駅に来た時に食べていたのを思い出したから。

 ごく初期の作品(コミックス8巻に収録)なので、岩手県がものすごく田舎であることを強調されていて、ソバひとつ頼むにしても、

 「そちらのお客さんけつねうろんだっぺか」

 「ちがう天玉そばだって言ってんだろ!」

 というやりとりをされていて、一度は食べてみたいと思っていたのです。まあ今日はちょっといいことがあったし、てなもんで、なんだかクロスワードパズルに 夢中になっているオバチャンにオーダーをする。

 NREなら機能的かつ強力な設備でチャッチャッチャッと作るところでしょうが、こちらは家庭用のガスコンロとかでゆっくり(といっても、もちろん普通のソバ屋 よりは圧倒的に早いのですが)調理して出してくれました。

 麺は平べったくて太いもので、味は特に文句をつけるようなものではありません。それよりもむしろ嬉しかったのは、「食べやすいところで食べていいですよ」とか、 テレビ放映していた『天地人』を見ながら色々な話をしたオバチャンの温かさ。あまりトークが得意ではない(嫌いなわけではない)犬神ではありますが、そうやって 話し掛けてくれる気持ちにこたえたくて、ソバを食べ終わる(大体、ドラマが終わる時間とイコール)までの短い時間ではあるものの、おいしく楽しくいただきました。 ごちそうさまでした! あと、昨日の再放送で死んだのは秀吉じゃなくて前田利家だと思います! 家康も大納言って言ってたし!

 そして食べ終わった後は、まだ少し時間があったので、再び駅の周りをスピードウォーキングで観光。地元の本屋さんを軽く眺めつつ、「とりあえず早めに戻っておくか」 と駅舎に入ったら発車3分前(若干、電車の時間を遅い方に勘違いしていた)。慌てて電車に飛び込んで、さあ後半参りましょう後半しゅっぱーつ! と、いかりや長介の如く走り出したのであります。……ちなみにこれに乗り遅れると次は2時間後でした……。


 7.犬神、カメラを構えてバク進する――三陸鉄道車内(復路・小本行き)


 帰りのボックスシートは、ジャージ姿の女の子と相席。背中には久慈市内の某高校の名前がプリントされていたので、今から出かけるところなのでしょう。揃った前髪を 垂らし、後ろはキュッとツインテールにした黒髪がとても可愛らしかったです。

 これがたとえば10年前の純情な犬神ならば、恥ずかしくて相席なんてとてもとても、と言ったところでしょうが、色々あってそれなりになった28歳の今ならば、そんな 過剰な自意識よりも「とにかく座ってゆっくり景色を眺めたい」という気持ちの方が強く、ためらうことなく対角線上に着席。もちろんその子も私のことなんて一切 気にせず、正面(私の横)に足を放り投げて外の景色を眺めていました。大したもんですよ、アン。

 そして2つくらい先の駅でその子が降りたあとは、往路で景色を眺めながらわかった要所要所で、チャンスがあったら写真を撮ろうと、ボックス席をフル活用しながら動き回って いました。ようやく、写真を撮りに行く気持ちの余裕が出てきたのですね。

 帰りも同じように団体さんがいたせいか、同じポイントで止まってくれたので、ようやく取り出した愛機α−sweetを持ち出し、窓際で景色を眺めていた人を スイマセンスイマセンとどかして写真をパチリ。何となく満足の行かないところではありますが、その方がもう一度、いやいや一度ならず二度三度と来たくなるから、 きっといいことでしょう。

 そうそう! 帰りの電車には「アテンダント」の女性が乗っていました(参照2・行きは男性乗務員/運転手ひとり)。 この女性は各駅が近づいた時とか、名所とかを通りかかる時に、それをいちいち説明してくれるのですね。このあたりはまさに観光バス感覚! もしかすると団体さん 向けのサービスなのかもしれませんが、そこに乗り合わせたのはある意味ラッキーだったかもしれません。

 とりあえず私が聞いて「え〜っ!?」と思ったのは、確か普代村だったかな。岩手には根強く残る義経北行伝説のひとつ、蝦夷地に渡る前に渡航の安全を祈ったと 言われる鵜島神社のこと。そんなものがあると言われたら、それを目的に行ってみたくなるじゃないですか。これでまた、三鉄に乗る理由が出来ましたね。

 まあ、そんな感じで再び小本駅に着き、再びマイカーに乗って100キロからの道のりを走行、帰途に着いたのであります。奇しくも25周年、私が往復で買った切符の 合計もまた2500円だったのでした。


 8.犬神、三鉄ファン宣言する――おわりに


 とにかく思ったのは、この三陸鉄道と言うのは、ただの移動手段ではないということです。もちろん移動手段としても、車で行けば非常にしんどいアップダウンを まっすぐに突き抜けて走れるのだから、快適この上ないのですが、それ以上に景色や、電車に乗ること自体を楽しめたのですね。

 あくまで私は内陸人なので、地元人として定期的に利用することは出来ませんが、応援したい気持ちはありますし、実際的な投資もしてきました。だから今回は、 堂々と三陸鉄道支持をぶち上げたいと思います。潰しちゃいかんのです! ずっとずっと、走り続けなければいかんのです!!

 今年中にもう一度、今年中が無理でも来年に一度か二度、何度でも乗りに行きたいと思います。だからこれからも、30年、40年と、そこにあり続けて欲しいと切に願う ところであります。切っ掛けは「久慈ありす」と「釜石まな」ですし、割と今でもそんな感じですが、応援したい気持ちには変わりありませんから!


 おまけ:
 発売、即完売!? 関連グッズ等々について


 どうも「久慈ありす」のCDは三陸鉄道発売ではないみたいですが、もう買っちゃったから仕方がない。ところで元々 これってなんなんですかね? DSのゲームとかになってるのは、見たことあるんですが……。

 今日申し上げたグッズは通信販売でも購入することが出来ます。そう、たとえば、今回買ったクリアファイルとかも……と言おうと思ったら『売り切れました』だって。え〜!? だって昨日(9月5日)、発売したばっかりですぜ!? いやはや、こうなると、 わざわざ現地まで行って買った甲斐があったと言うもの。改めて犬神、久慈ありす&釜石まな、そして三陸鉄道を断固支持しますっ! 新しいグッズが発売されたら、また小本駅から電車に飛び乗って、久慈駅まで 買いに行きますから!

 (ちなみにクリアファイルについては、9月7日時点でまた各駅には少し在庫があるそうです。とはいえ限定400セットですから、手に入れた方は末代までの家宝と しましょう)

 あと、今回は触れませんでしたが、ほかに久慈特産の銘菓として「久慈ありすイラストそのまま煎餅」という、ヒネリも何にもないど真ん中なネーミングのものがあります。 これは我が県が誇る名物・南部せんべいに、食品プリンターによってフルカラーで美麗な彼女のイラストを載せた脅威の菓子です。通信販売するとかしないとか言っていましたが、 どうなったんでしょうね。

 ちなみに私が買わなかった理由は……だって、これ、食べるんですか? こんなに可愛い女の子を、頭からバリバリ??……ごめんなさい、それはちょっとできません。


 それから、一般的な銘菓として『三陸鉄道赤字せんべい』というのもあります。じ、自虐ネタですか!? いや、その真意は『赤字を食らう』→黒字にしていこう、 という地元の支持者からの熱くて強力なメッセージなんです。私も赤字をバリバリ食べてやろうと思ったのですが、2000円の大きなセットしかないので断念。一袋680円くらいで 小分けにしていてくれれば、よかったのですが……。


 外部リンク:三陸鉄道株式会社

 時刻表、運賃、さらにオンラインショップなどがあります。私ひとりの力で赤字経営をひっくり返すことは出来ませんが、みんながたくさん利用すれば、きっと いい方向に向かっていくはず。ここで調べて遠くに住んでいる人は旅行日程に三鉄を組み込みましょう。そして沿岸に住んでいる者たちはみんなで利用しまくりましょう! 

 そうそう。今回のコラムのタイトルにもなっている「不思議の国の北リアス」というのは、田野畑以北の沿岸市町村をひとまとめにした愛称です。残念ながら私が思いついた わけではないのですが、アリス好きの犬神にはなかなかいいタイトルです。

 さらに言うと各駅にサブタイトルと言うか、ひとつひとつに愛称がついています。たとえば、「はまゆり咲く普代」「カルボナード島越」「泉わく小本」などなど……ああ、 ちなみにカルボナードというのは、スパゲッティの名前ではなくて、宮沢賢治の童話『グスコーブドリの伝記』に出てきた火山島の名前です。

     



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