花開く前に、何を思うのか――
花泉町・花と泉の公園『ぼたん・しゃくやく祭り』紀行
(……を2011年に思い出しながら書きました)
序:
その喧嘩、買いましょう
これはブログの記事にも書いたことなのですが、すべてのきっかけは、
このイラストが描かれた車が止まっているのを見かけたことでした。

私はこの絵を描いた方のことは詳しく知らないのですが、先日などは絵描きさんがわざわざこの会場まで来てサイン会を開いたとか。その日の私は
夜遅くまで仕事でしたし、それほど興味も湧かなかったのですが、それはある意味では「興味を持たないよう意識して遠ざけてきた」のかもしれません。
それでも、日々を生きているだけで何かと目に付いてしまいます。名前が決まった時は岩手日報でそこそこ大きく報じられたし、ポスターもそこかしこに
貼られて。
最後の決め手となったのは、私が心身ともに疲れ果てて湯治に赴いた新湯本温泉美翠館の中に大きく張り出されていたポスターを見たこと。
私が行く先々でこんなにもアピールされたのでは、もはや犬神も逃げ続けるわけには行きません。ポスターの前に立って開催期間、および場所を確認のうえ、
実際に行ってこの姉妹『花恋』(姉)と『泉美』(妹)がどのように出迎えてくれるのか、確かめてやる! という気持ちになってしまったのでした。
1.犬神、久々に時速100キロで走る――自宅〜花巻IC〜一関IC〜その場所まで
以前、久慈に行った時はその方が便利だから自動車と電車を併用した交通手段で行ったのですが、今回は一関市なので、まっすぐに東北自動車道を利用することに。
一応アクセス情報を調べたところ、一関インターからさらに30分とか。
結構、あるのです。
まあ行政の事情で同じ一関市と謳ってはいるものの、元々は花泉町という別個の町ですからね。それもまた、やむなしということか。
ということで、久々に高速道路を走ってみたのですが……やはり最初はちょっと怖かったです。
まず、まっすぐ走らせることが大変で。――まあ、シマシマの吹流しを見るとほぼ真横になっていたので、風が強かったのもあるのでしょうが、慣れるまでは結構
無理して100キロ前後のスピードで走っていました。
こんなことを言いつつ目的地の一関ICに着き、高速を降りて今度は下道をゆっくりゆっくり走る。
例によって、詳しい交通アクセスはわからないので、「さてどうしたものか……」と思ったものの、インターを降りたところから『花と泉の公園』はこっちです、
という看板が要所要所にあったので、何とか(ほとんど)迷わずにたどり着くことが出来ました。
花泉町というところは、これが初めての訪問だったのですが、実にのどかなところだな……というのが印象でした。のどかというか、建物があんまりないというか、
田んぼと山ばっかりだな……というか……。
『花と泉の公園』を見て、そのあともし時間があったら(二度と来ないかもしれないし)どこかに寄ってみようとも思ったのですが、私のようなよそ者が足を
踏み入れるとすればせいぜいスーパーとかそのくらいしかなく、でもあえてスーパーに行く用事もないしな……と思い、結局通り抜けるだけで帰ってきちゃいました。
もしも、つげ義春先生なら駅から出て商店街を歩き、本屋に行ったり宿屋を探したりしつつ思索にふけることもあるのでしょうが……ね。そもそも今回の旅行の動機が
極めて通俗的なので、最初っから風情も何もあったもんではないのですが。
ともかく時々「本当にこっちでいいのかな」と思いつつ、いよいよ目的地『花と泉の公園』へ。立派な門をくぐり、そこそこ長い坂道を走り終えたところにある
駐車場に車をとめ、すっかりほこりをかぶっていたカメラを片手に、会場に突入したのでした。
2.犬神、ぼたんのツボミを凝視する――ぼたん園

……いや、まあ、本来の目玉である『ぼたん』がまだツボミであるということは、事前にわかっていたことでした(公式ホームページで)。
しかも平日。さらに天候不順(雨こそ降らないものの分厚い雲が垂れ込め、気温もかなり低め)。でも行けるチャンスは昨日しかないという悪条件。まあ、
それがいかにも犬神らしいところではありますが……。
しかしながら無料開放中だからなのか、それなりに訪れる人はいました。これはちょっと意外。……確かにぼたんは咲いてなくても、看板にもある通り、季節の花はそれなりに
咲いてましたからね。
それに、こういった公園大好きな犬神ですから、単純に広い敷地内をフラフラ歩くだけでもそれなりに楽しかったです。
……でも、やっぱり、せめて天気がよければよかったなあ……と思いつつ、敷地内を歩き、もうひとつの建物『れいなdeふろーれす』へ向かったのでした。
3.犬神、地球の裏側へ思いを馳せる
私がお伺いした時、屋内施設である『れいなdeふろーれす』内では、『ペルー写真パネル展』というのが開催されていました。
ペルーといえばマチュピチュでありナスカ高原であり『太陽の神殿』……はメキシコか。まあ、どっちにしても南米大好きな犬神にとっては、非常に魅力的な展示会です。
写真撮影は基本的にNGで(こういった展覧会では当然ですが)、しかも1年近く前のことなので、あまり詳細な記憶はないのですが……逆に、今回少しでも情報をと
思って検索して、それで初めてわかったこともありました。
というのは、そもそもどうしてペルーなのか、ということ。……それはつまり、このベゴニアという花がペルー原産だから、ということのようなのですね。今の今まで
どうしてそんな基本的なことも知らなかったのか。それは先ほど述べたようにペルーといえば空中都市でゼビウスな私であり、一方でこれまで花を見て綺麗だと思うことはあっても
その由来までは頭が回らない私だから。
忘れてしまったこともたくさんあるけれど、新しい発見もあったということで、え〜と……まあ忘れてしまったものの方が若干多いですが、ともかくそういうことで
ペルー写真展だったようです。あの時、民族衣装や高地の写真を見て感慨を覚えたことは忘れません。
4.犬神、花の回廊にてベゴニアに見とれる
さて、そんなペルー写真展を経てたどり着いたのは、この『花と泉の公園』におけるもうひとつの目玉『ベゴニア館』です。あ、まあ、この建物全体をさして
ベゴニア館であって、正式名称で言えば『鑑賞温室』というところです。ただ、私はこれまた今の今までその温室だけを指して『ベゴニア館』というのだと
思っていたのですが、どうでもいいですかそうですか。
ここは『東北初の大型鑑賞温室』とうたうだけあって、かなり広いです。グルッと円形に歩道があって、その内側と外側にいっぱいに敷き詰められたベゴニア。しかも
立体構造になっていて、スロープを上がった二階部分にも花がいっぱい飾られています。
そしてそして、さらにその上にもモノレールがあって、そこからスキー場のリフトの如くゴウンゴウンと鉢植えが回っているのが印象的でした。こういったギミックも
含めて、いかにこの場所に力を入れているのかということが、よ〜くわかる場所です。
ここでの写真撮影はOKなのかNGなのか……ちょっとわかりませんでしたが、特に誰か管理の人がいるわけでもないようだったので、ケイタイカメラでカシャッと
撮ってみました。

画像がモヤッとしているのはケイタイカメラの性能あるいは撮影者の技量はたまたその両方です(笑)。ともあれ、私が言わんとしていることを伝えるために、少しは
役に立つのではないでしょうか。撮った時はオマケ程度のつもりでしたが、こうしてホームページの記事に使えるのだから、やっぱり撮影しておいてよかった。
ちなみに温室の中にはちょっとした休憩コーナーというか『カフェスペース』(公式ホームページ)があるのですが、やはり平日だからなのか、誰もいませんでした。
そのために花に囲まれてティータイムなどと洒落たことを楽しむことは出来ませんでした。そもそもの動機が、動機だから、というのもあったと思いますが……。
5.犬神、お昼ご飯をケチる(笑)
そうこうしているうちに、お昼になりました。
建物の中には食堂(レストランはずみ)があるのですが、なんだろう、作業着姿の人たちとかスーツ姿の人たちとか、とてもとても観光でやってきた私が何かを食べる
雰囲気ではなかったのですね。……加えて、その食堂エリアとそうでないエリアの境目があいまいすぎて、食券を買うのか座ってれば注文を聞きに来てくれるのかもわからず、
まあそんなこんなで、どこか別なところで食べようということにしたのでした。
もっとも、あえてこの敷地内で食べないで、どこか外に出てから食べてもよかったのですが、今回はわざわざ高速を使ってこんなところまで来たのだから、出来るだけ
この場所でイベントをこなしたいと思い、最終的に出店のたこ焼きを食べました。まあ「ぼたん・しゃくやく祭り」ですからね。祭りといえば……ね(かなり強引な論理)。
平日で人はあんまりいないし、天気もあんまりよくないし、祭りと言うには少々寂しすぎる嫌いがある中での祭りフードでしたが、それでもあの時食べたたこ焼きの味は
今でも忘れられません。こうして1年近く経ってもそう思えるのだから、よかったのかな。
6.犬神、口車に乗せられ自分を見失う
さて、軽く昼ご飯(?)を食べたあと、今日のクライマックスというか、メインエヴェントというか、直接動機となった「花恋&泉美」との勝負でした。

一応、左のような大きいポスターはぼたん園の入り口にドーンと掲げられていたのですが(クリックすると大きな画像が表示されます)、九割九分売っているであろう
オリジナルグッズの売り場が見当たりません。
もっとも、この姉妹をダシに呼び寄せられ、それなりに展示物を眺めた時点で当初の目的は達成されたようなものなんですよね。、もしもそういったオリジナルグッズを売っていない、
または売り場を見つけられないのであれば、それで一向に構わないのです。
ただ、そう言うにしても、ちゃんと『グッズを売っていない』という事実を確認しないと、「もしかしたらあったかもしれない」という悔いを残すことになりますからね。
改めて「れいなdeふろーれす」の方を調べてみたのでした。
そうしたところ、お土産売り場を発見。……発見と同時に目に飛び込んできた、これでもか〜これでもか! と言わんばかりのグッズの数々!!!
もうね、なりふり構わないというか、ふたりを最大限利用しまくったオリジナルグッズ満載でした。ポスターや下敷きなどは言うに及ばず、マグカップ、Tシャツ、
クッション……。
最近にわかにTシャツを集め始めている犬神ではありますが、このふたりの絵柄がプリントされたTシャツを着るというのは……なんと言うんですか、人として、
人間として、ちょっと恥ずかしすぎるのではないでしょうか。ギリギリ、イベント開催中に敷地内でスタッフが着るのなら、いいと思いますが……市井でこれを着て
歩くというのは、イカンでしょう。
そんなことを言いつつ物色していると、店員さんに『携帯クリーナー』をオススメされました。いわく、私が来る数日前に開催された、このふたりの絵を描いた
絵描きさんのサイン会の際にはまだなかった新グッズだとか。まあ、オリジナルグッズを買いに来たのだし、そうやってオススメしてもらえれば断る理由はない
ですわな。
このあと、さらに下敷きを手にとるなど、何かが吹っ切れてしまった犬神。しまいには展示商品の中では上から2番目か3番目くらいに値が張る『タペストリー』と、
レジにそれらを持っていった時に「これはいいですか?」と言われて、「じゃあ、それも」と二つ返事で買ってしまった『ポスター』……本当はそのポスターの代わりに
タペストリーを買ったんだけど、と思いつつ……。
というわけで、とことんまで『花恋』と『泉美』にしてやられてきた犬神でした。まあ毒をくらわば皿までというか、同じアホなら踊らなきゃというか、相手の9の力を
受けて10の力で返すというか……。いったん行くところまで行こうと思ったのです。その、自分がしたことに対して、後悔は……まったくありません(キッパリ)。
7.犬神、花恋と泉美に別れを告げる
そんなこんなで当初目的を、本来の予定以上に果たしてしまった私。片手にさっき買ったグッズを、もう片方の手にはベゴニアの鉢植え(『れいなdeふろーれす』で買った)
を手に、午後2時過ぎには公園を後にしました。
もしも花がちゃんと咲いていたら。天気がよかったら。……もしも距離が近ければ、そういった天候などを見ながら行くことも出来たかもしれません。そして『ぼたん園』の
あたりも、もっと盛りだくさんな感想を書けたのかもしれません。
ただ、何せ100キロ以上、離れていますからね。高速を使っても1時間以上かかるし、それなりにコストもかかるので、簡単に行くことは出来ません。
まあ、「もし」なんて言ってみたものの、とにかくこの結果には満足しています。実際に行って、『花恋』と『泉美』に向き合い、それなりの戦果を得たのですから。
ここはこれでヨシとしましょう。
そして、もう一度行く機会があれば、その時はまた……。
Ex.犬神、1年近く前のことを振り返りながら記事を書く
……と、11ヵ月以上前のことを思い出しながら書いている、現在は2011年です。
別にいきなり思い出したわけではないのです。「書かなきゃ、書かなきゃ」という意識は常にあったのですが、なかなか言葉がまとまらなくて、そのために11ヵ月も
過ぎてしまったのです。あまりにも長すぎるスパンで恐縮です。
この時に買ったベゴニアは、残念ながら枯れてしまいました。花が咲くたびにその時のことを思い出そう、と思って買ったんですが、結局それはできずじまいでした。
それでも当時なんとなくケイタイカメラで撮影した画像が残っていたのは、ちょっとよかったです。本当は私の愛機α-sweetでカシャカシャ撮りまくったんですが、
ここ数年(!?)フイルム状態で保管しているので、結局デジタルな写真頼みになってしまうんですね……。
今回、何となく思い出して『花と泉の公園』を検索したところ……う〜む、やはり先日の震災により、せっかくこの春オープンする予定だったのが秋まで延期になって
しまった模様です。当然ながら2011年版『ぼたん・しゃくやく祭り』の予定もなさそうです。アレは屋外だから、やろうと思えばやれそうな気もしますが、そんな状況でも
ないか……。
その一方で、この時に作成された『花恋』と『泉美』のオリジナルグッズは、現在も公式ホームページ内の通販サイトで購入可能です(!)。厳密にはこれらのグッズを
製作している花泉観光開発株式会社様の通販サイトですが、ポスターやステッカー、さらにマグカップなどを現在も販売しているというのはスゴイことです。
ちなみにこの中で一番高いのは『ビッグステッカー』。15000円です。サイズは1280×650mmで、「壁や車にどうですか」とのことですが……もしかすると前に見たアノ車は、
宣伝カーではなく個人所有の車だったのか……!?
ま、まあ、それはともかく……三陸鉄道(の『久慈ありす』と『釜石まな』)ほどの熱烈支持ではないので、とりあえず手元にあるグッズで満足しているので、さらに
何かを買おうとは思わないのですが、点ではなく線として今もグッズ販売が続いているのは、何となく嬉しいです。もしかすると、「その後の『花恋』と『泉美』を
追いかけて」とか何とかつって、見に行くかもしれません。って、やっぱりふたりにモエモエしてるのか私は……?
花と泉の公園 公式ホームページ(通販サイトもこの中にあります)
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